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幸せは日常の中に潜んでいる

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誰もが「日常」に飽きてしまう。だから美味しい物を食べたがり、旅行に行きたがり、引越しをしたがり、転職をもくろみ、移住まで夢見る。しかしながら、何を手に入れても、またそれが日常となり、次に欲しい物を探し続ける。隣人がそんなだから、みな当たり前のように飽きて、新しいものを欲し続ける。まるでステップアップしているかのうような感覚で。

以下は、宇宙飛行士の山崎直子さんが、去年の夏頃に新聞のコラムに書かれていたことです。何年間も訓練し続け目標にしていたこともあり、宇宙は特殊な場所だと思っていた、と。指先で壁を押すだけで体がすっと動くことや、宙返りが普通にできること、寝袋の中で宙に浮きながら眠ること、そして極みは、真上に輝く青い地球を眺めた時の感覚だ。しかし数日も過ぎると段々と当たり前のこととなり、非日常だと思っていた宇宙が、だんだんと日常になってしまう、のだそうだ。そして、こんどは地球に戻った時の、まるで漬物石が頭の上にのっているかのような重さ、紙一枚でもずっしりとくる重さ、その重力の大きさへの驚き。そして船外に出た時のそよ風の心地良さ、草木の香り、土の感触、何もかもが皆愛しいのだ、と。目の前のありきたりの風景や香りこそが何より愛おしく感じられた、と。

そう、普段の当たり前の暮らしって、とても素晴らしいのです。日常はありがたいのです。忙しく過ぎてゆく日々の暮らしの中にこそ、幸せが潜んでいるのです。私の家のはす向かいのおばあちゃんは、とても素晴らしい方です。もう50年以上ものあいだ毎日、自転車をこいで仕事に出かけてゆき、昼休みに戻って昼食をとったら職場に戻り、仕事を終えて夕方に帰宅されます。草花を愛し、たくさんの植物を育てています。街路樹の桜の葉が散る頃には、家の前からはだいぶ離れているというのに、朝に夕に枯葉を掃いて歩道を美しく保ってくれます。私は幼少の頃から知っているので、今でも「おばちゃん」っと呼んでいますが、おばちゃんは、たぶん今年で90歳。ステップアップなんかしなくても、とても幸せそうに見える方なのです。

2017.1.23  Hitoshi Shirata

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