ポックリ逝くために良く暮らす

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私の家のはす向かいに住むおばあちゃんが亡くなりました。今年90歳なのかと思ってましたが、91歳でした。十二指腸癌だったそうです。全く自覚症状が無く、食欲の無い日が3日も続いたため、旦那さまや職場の方が心配して病院で診てもらったところ、余命1ヶ月の末期癌だったそうです。自覚症状の無い十二指腸癌はとても珍しいことらしいです。入院の前日まで自転車で職場に通ってました。残された旦那さまが居るので不謹慎ですが、こんなに清く死ねるなんて素晴らしいことです。私も見習って、日々精進、淡々と仕事をして過ごしたいと思います。

私の母もこれに近い逝き方をしました。ある日、仕事から戻ると母がベッドに横になっていて、「頭がすごく痛いから、ご飯食べ終わったら救急車を呼んでえ」。私、「えっ、ご飯食べる前に呼ぶよ」。「サイレンを鳴らさないように頼んでね」。この日は、救急患者が集中しているのか、なかなか受け入れ病院が決まりません。待機の車の中であまりの激痛のため、母は気絶してしまいました。30分後、行き先の病院が決まって搬送されましたが、意識はそのまま戻らず、1週間後に亡くなりました。くも膜下出血です。母の友人たちに言われました。「お母さんらしい死に方だわあ」。私もそんな死に方をしたいな、っと思いながら日々暮らしています。他にも、こんな潔い死に方をした人たちを思い返してみるに、利己的な気持ちの弱い方々が、すっ、と逝っているように思えてなりません。

人が幸せを感じる時の脳波の状態というのが研究されていて、人が幸せを感じる時というのは、完全に利他的な精神状態になった時なのだそうです。利他的な精神状態になっている時こそ、幸せを感じている脳波の状態になるのだそうです。あれですよ、きっと、高僧が慈悲深い気持ちになっている時とか、母が幼いわが子を抱いている時とか...。人ってやっぱりとことん社会的な動物なんだと思います。アリやハチは人から見ると、1個体が全く自我を捨てて、一つのコロニーが一つの生命体であるかのごとく振舞っているように見えますが、人も大した違いのない生き物なのかもしれません。最近のアリの研究では、働きアリの働き具合にも差があって、怠け者のアリはどのコロニーにも必ず存在するらしいですし、働き者のアリのみ集めてコロニーを作っても、必ず怠け者のアリが生まれてしまうそうです。個性を生んでいるのは個体の素質ではなくて、コロニーの中での位置付けに起因していることになります。人もいっしょですね。だからポックリ死ねるよう、日々精進。働くことは損得だけのことではなくて、働く行為自体に大きな意味があります。

2017.5.22  Hitoshi Shirata

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