大地

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毎朝8:00から始まる地響きと騒音に悩まされています。隣りで土地区画整理のための住宅解体作業が続いています。見慣れた風景が突然になくなり、青空が開けて、コンクリートが連続する殺伐とした風景が広がっていきます。次はこのコンクリートを掘り起こす作業に入るのでしょう。普段は意識しない「大地」について考えさせられます。

子供の頃、この自宅の周りには原っぱが広がっていたので、土の匂いや草の匂いを嗅ぎながら、蝶やバッタを追いかけていました。自然にできた沼地にはガマの穂が上がりセリも山ほど採れました。原っぱで一歩足を進めるたびにイナゴが何匹も飛び回っていたものです。当時は意識していなかったものの、季節を匂いで感じていました。私の動植物に対する洞察力はこの時代に養われたものです。

今流行りの窓の開かない超高層マンションで育った子供はどんな大人になってゆくのかな? 植物屋をやっているといろいろ心配になってくるのです。「サボテンは水をあげなくてもいいんですよね?」とか「光が無くても大丈夫な植物はありますか?」とか、???な質問がお客様からあったりしますから、そういう方々のお子さんは人間以外の生物に対してどれだけ鈍感な子になってしまうのか、心配になります。リサイクルの意識が高まったりゴミの分別ができるようになっても大きな問題解決には繋がらないですよね。地球環境問題の解決は、人類すべてが自然のすばらしさを体感することからしか始まらないはずです。たまに遠出して大自然に触れるだけでは洞察力が育まれないのです。見ていても見通すことができなければ見ていないも同然です。

大地に触れる体験が机上で勉強すること以上の知恵を育みます。子供は、採った昆虫が死んでしまったり育てていた植物が枯れたりする体験から多くのことを学びます。子供だけではありませんね、大人もです。大地に触れる機会の少ない都会生活が長い方は、ぜひぜひ、植物を暮らしのパートナーにしてみてください。ペットでは駄目なのですよ。ペットは人間社会に従属していますが、植物は自然の一部なのですから。

2008.10.19  Hitoshi Shirata

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