植物の魅力

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なぜ植物に心を動かされるようになったのだろう? 取材等でよく聞かれる質問で、「なぜ植物が好きになったのですか?」という問いがあります。

こどもの頃から動植物が好きでした、とか適当な答えで済ませていましたが、では子供のころに好きになった理由はなんだろう? 親の教えがあったわけでもなく、学校で教わったことが切っ掛けになったわけでもない。

生まれ育った土地に多少の草木があったからだろうか? 東京でも郊外の、開発され始めたばかりの住宅地だったので、幼い頃はよく、近所の原っぱをかけずり回って遊んでいました。カエルやオケラ、近くの寺の池にはタナゴやクチボソ、タガメやゲンゴロウ。捕虫網で蝶を追いかけると虫かごから溢れるほどにモンシロチョウが捕れたものです。それでもカブトムシやクワガタなどは捕れなくて、ペット屋でカブトムシの幼虫を買ってきては育ててました。植物というか昆虫に夢中だったのです。

しかしながら、薄っすらとしか記憶していないことではありますが、いま正に葉が展開しようとしている植物の生長点、地上部分からは想像もできないような太くて新鮮な真っ白い根っこ、球根の皮がむけた時の鮮やかで艶のある鱗片の肌。そんなものに遭遇するたびに言葉にならない静かな興奮というか、声にならない感動を覚えた記憶があります。虫がたくさん捕れたときの興奮や、徒競走で速く走れたときの快感や、縄跳びの二重跳びを何十回もできたときの感動とは違う、身に貼りつくような興奮です。

大人になり、人間社会の仕組みに興味が湧き、美術や音楽やファッションを知り、派手で華やかな感動ばかりに目を奪われているうちに、それらの記憶はずいぶんと薄れてしまいました。それでも、私のものを観察する力の源は、幼少の頃の植物や昆虫を観て感動した経験と、その時に感じた生命力の魅力に基づいているのだと思います。今でも四六時中、そんな感動を求めてきょろきょろしながら歩いているのかもしれません。そしてファッション業界にいるときに虜になった生活文化の魅力と、植物のもつ生命力の魅力を結びつける「何か」を探しながら、今は NEO GREEN を創り続けています。私が心動かされる植物たちをできるだけ多くの方々にお伝えしようとして。

2008.12.09  Hitoshi Shirata

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