捨て猫と亀のこと

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保護されていた捨て猫の里親を引き受けてから一年半。猫を飼うのは2度目だからと、兄弟まとめて3匹引き受けたけれど、1匹が8ヶ月目で赤血球が減ってしまう病気に......。先天性の病気で死ぬかもしれないとか、一生薬を飲ませないといけないかもしれない、とか獣医さんに言われて、原因もわからないまま半年。薬の影響なのか、吐いたり下痢したりがあまりにひどいので、薬を切って、獣医さんを変えてみた。そしたら、あら不思議。血液検査は異常なし。新しい獣医さんに通って3ヶ月間、異常なしが続く。変えたことといえば与えている食事。発症した直後からペットフードを止めて、教本見ながら、手作りに変えただけ。原因は、ペットフードが病気の子には合わなかっただけ、としか思えないのです。新しい獣医さんに食事変更のことを伝えたが、病気の原因は不明とのこと。不思議です。

いつも盆栽を仕入れさせてもらっている、盆栽問屋さんが飼っているニホンイシガメ。とてもよく馴れていて、問屋さんご家族のそれぞれを識別しています。ターちゃんが一番好きなのは奥様。遊んで欲しいときは服に爪を引っかけながら体をよじ上り、かまってもらえないときは、耳たぶを噛んで、遊び相手をするよう促します。水槽から出してくれる役目は旦那様。他の人の足音がしても、じっとしているのに、旦那様の足音がすると、早く出せ、といって足をバタバタさせ、水槽のガラスをよじ上ります。水槽から出ているときは、常に奥様が居る方向に顔を向けていて、意地悪で体を持ち上げ、反対方向に向かせても、また奥様の方に向き直します。まるで猫のように人を識別して、情を表現します。あんなに小さな脳で、まさかこんなに人に馴れて、じゃれつくとは驚きです。もしや、そこいら辺にうろうろしているカナヘビだって、こちらの対応しだいでは、馴れるのかもしれません。不思議です。

動物たちの行動からは、いろいろなことを学ばせてもらえます。まるで仏教の教えのようです。彼らは、今、しか生きていません。たとえ年をとって、体力が衰えても、若い頃は良かったなあ、などとは考えません。たとえ交通事故で、足が不自由になっても、なんで交通事故なんかに合ったんだろう、などと後悔したりしません。なんで捨てられたんだろう、とも、不運だったとも、運がよかったとも思いません。欲望だって無いわけではないのに、人のように果てしない欲望にかられることはありません。長生きしたいとも、もっと美味しいものを食べたいとも、もっといい飼い主に巡り会いたいとも、思いません。ただ、今、を淡々と生きるのみ。でも、私たちは人。経済活動に関わりながら生きてゆくしかありません。山奥に住んでも他人と無縁ではいられません。情報を遮断せず、情報のパワーに左右されずに生活したいものです。

2014.9.26  Hitoshi Shirata

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