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『Alpes Alpi Alpen Alps』

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「そこに山があるから登るのさ」(ジョージ・マロリー1886-1924)なんつって、難攻不落といわれる崖やら峰やらを攻略した登山家は多々いましたが、このアルプスと言われる山脈ほど、人々を苦しめ、そして愛された山は他にありません。欧州最高峰のモンブラン、マッターホルン、ユングフラウなど数々の歴史ある高峰を有するこのアルプス山脈は、オーストリアを東端とし、スロベニア、イタリア、スイス、リヒテンシュタイン、ドイツを経由してフランスに至る、実に7カ国もの国に囲まれた大山脈です。本書は、その極端に大きな山々を、極端に大きな写真で見せるという、いわゆる「ど」がつく程ストレートな表現で制作した山脈写真集の名著です。19世紀から近代に至るまで、東西南北あらゆる角度から見るアルプス山脈を切り撮ったモノクロームの写真に、鮮やかな色みをのせた写真。その写真には、山に潜むロマンティシズムのような艶っぽさを讃えながら、いつだって雄々と構えるデカ過ぎる色男の風情さえ感じます。野球でいうなら「オリックス清原もデカイが、ヤンキースA.ロドリゲスには敵わないか、やっぱり」という大きさと美しさですね(解りにくい人、ごめんなさい)。ともあれ、この510mm×320mmという異様に大きな、ただの山々の写真に興味を持った時点で、あなたの山に対するロマン指数は、相当なポテンシャルを秘めています。この有り得ないくらい高く高く積まれた岩の塊の写真に圧倒されて、もし気が向いた方は、是非に登って下さい!


著者:Agnès Couzy

出版社:Editions Jean-Pierre de Monza


"自然愛好家、登山家そしてアルプスを愛する全てへの人へ"と書かれた本書は、19世紀から始まるフォトクロームというモノクロ写真をカラーにするプリント手法によって、モンブランからチロルまでのアルプスの山々をノスタルジックな風景として収録している。まるでペインティングのような不思議な写真集。

2008.3.19  Yoshitaka Haba : BACH

幅 允孝(はばよしたか)

幅 允孝(はばよしたか)

BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。国立新美術館ミュージアムショップのスーベニアフロムトーキョーやLOVELESS、CIBONEなどにおける本のディレクションのほか、編集、執筆など、本周りのあらゆる分野で活動中。今年に入ってから、SHIBUYA PUBLISHING BOOKSELLERS、大阪の阪急百貨店メンズ館のThe Lobby、銀座のHANDS BOOKSがオープンしました。

URL: www.bach-inc.com

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